復興灯台が照らし出す、いわて三陸の物語。人、風景、モノ、コト…。動き出しているいわて三陸の姿を灯台守たちが丹念に紡いでいく。

2013年4月

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宮古の町に元気を与えるために 彼らは野球に励み、強い大人になっていく 宮古市立河南中学校 野球部

昨冬から学校近くの河南仮設へ雪かきのボランティアを行っている同野球部。このボランティアからつながりが生まれ、仮設住宅に住む皆さんが応援団になってくれた。力強い応援を受けて、昨夏の「ベースボール・マガジン社杯 東北学童・少年軟式野球大会」で見事優勝を果たした。素敵なニュースを届けてくれた宮古・河南中野球部とは、どういうチームなのだろうか。小松順一監督に話を伺った。{C}

 

宮古の未来を託すため、今伝えたいこと

野球だけでなく、ボランティア活動など様々な取り組みに力を入れている同野球部。その中で選手たちは何を学んでいるのだろうか。指導の根底にあるものは何かを尋ねると、小松監督は力を込めて話してくれた。

10年後の宮古や岩手を変えるのは私たちではなくて、この子ども達です。未来の宮古、岩手、日本を変えるためには人のために汗を流して働くことの出来る人間、しっかりコミュニケーションの取れる人間にならなければいけない。自分の頑張ったことが、人への思いやりやおもてなしにつながるということを伝えています。勝ち負けなどの結果よりも、そういうことに迫ろうと。100年に1度の不況と言われて、1000年に1度の大震災に襲われ、その中で生き抜くためには、本当に強くないと生き抜けない。そのための訓練なのだといつも話しています」。

思い描くのは地域の発展を担う大人になった彼らの姿。"カッコ悪い""めんどくさい"と逃げてしまいそうなことでも、選手たちは熱心についてきてくれる。その素直さに期待を込めて、小松監督は日々の指導にあたっている。

 

気づく力を養った毎朝の習慣

「うちの選手たちは体が小さいです。特別運動能力が高い子もいない。だから粘り強く、我慢して戦うしかない。よく『心技体』といいますが、うちのチームは、体も技もないので『心心心』なんです」。

野球の技術力や体力をカバーするために、まず心を鍛えることに重点を置く。今は朝一番の昇降口掃除に取り組んでいるという。他の生徒が登校してくる前の朝7時に集合して、隅々まで綺麗に掃除する。水が凍ってしまう真冬でも水拭きは欠かさない。濡れた雑巾で拭いたらすぐに乾拭し、凍結させずに拭き上げるという。「全校生徒が気持ちよく登校できるようおもてなしをしようという気持ちでスタートしたのですが、毎日きれいになると、楽しくなってきまして。生徒たち私も玄関掃除を楽しんでいます」。生徒は制服で、小松監督はスーツ姿で、コンクリートに膝をつき、毎日熱心に昇降口を磨いている。玄関をきれいにすることが習慣になると、選手たちは校舎内の様々な汚れや乱れを自主的に整えるようなった。気づく力、行動する力が自然と身に付いていた。

 

想像以上に重労働だった除雪作業

 昨冬始めた仮設住宅の雪かき。仮設住宅は隣接する建物と建物の間が狭く、玄関先の雪を建物のないスペースに運び出すことは容易ではない。宮古は頻繁に積もるわけではないが、時より水分を含んだ重い雪がどかっと降る。そこで同野球部は雪が積もるたびに雪かきに出かけた。「実際に仮設住宅に行って初めて、ちょっとした雪でも大変ということに気づきました。自分たちからできることをみんなで頑張っていこうと子どもたちから声があがり、雪かきへ行くことしました」。一般の住宅なら簡単に片付くような積雪でも仮設住宅では2、3時間かかる。雪かきは普段のトレーニングよりも体力的にハードだった。しかし、使命感が彼らを動かした。

 

目の前の相手を思いやる気持ちが、強さになった

震災直後、宮古・河南中の体育館は避難所になっていた。大変な思いをしながら毎日を過ごしている人たちを目の当たりにし、選手たちは変わった。どんなに厳しい練習でも弱音を吐くことなく、何事にも粘り強く取り組める人間に成長した。「その成果が今年度の東北大会でした。連日気温が30℃を超え、すごく暑かったのですが、気持ちで一生懸命戦っていましたね。そして全ての試合、5回6回に逆転する1点差の勝利でした」。粘りに粘って逆転劇を連発。東北ナンバー1に上り詰めた。

 優勝にはもう一つ、大きな力が働いていた。それは地域の応援だ。大会の前に仮設住宅に住む皆さんがスポーツドリンクを差し入れしてくれた。「ピンチの度に、仮設住宅の方々が応援してくれている、その応援が最高の力になるからと、おまじないのように話していました。選手たちは持ってきていた雪かきの時の写真を、ベンチに戻ってくるたびに眺めていましたね」。応援してくれる人を信じて彼らは戦い抜いた。雪かきから生まれた使命感がここでも発揮され、東北大会優勝というビッグニュースを仮設住宅の皆さんに届けることができた。

「私たちのことが新聞などに載ると、なにより地域の方々が喜んでくれるんです。そして、宮古が元気になる。どんなに小さなことでも宮古の方々が喜んでくれる・・・だから頑張ろうと思うんです」。

この冬も、選手たちはせっせと雪かきにでかけていた。2年目ともなると、子どもたちの手際も良くなり、なんだか腕っぷしも頼もしくなったように見えた。雪かきの季節が終わり、これから鍛えた心身をフルに使って技術を磨いく。地域の皆さんに喜んでもらうために、活躍したいと選手たちが意気込んでいる。この夏も、人のために頑張れる集団は強いということを、彼らが証明してくれるに違いない。

 

 

明るく元気に毎日の練習と昇降口掃除に励んでいる宮古・河南中野球部の選手たちのサムネイル画像厳しい環境の中で精神面も鍛える冬のトレーニング。オリジナルのトレーニング器具を使った筋トレも行っているのサムネイル画像昨冬の雪かきの様子。建物と建物の間を何度も行き来しながら雪を運び出すのサムネイル画像炎天下でも集中を切らすことなく戦い抜き、見事東北の頂点に輝いた「一人ひとりがもっと強くなり、先輩方が達成できなかった全国優勝を目指したい」とキャプテンの松尾遙人選手